テクニカルは非常に重要ですが、振り回されるのではなく自分の道具として使いこなすことが必要です。
多くのテクニカルが役に立つ場面のなかで、「エントリー時の判断」というのは関心が集中するところではないでしょうか。
テクニカルにおける判断基準は1つだけが理想です。
判断基準がいくつもあると、複雑になります。
初心者であればあるほど、判断基準が多いほうがより高度で、より勝てそうに見えてしまうのかもしれません。
判断基準が少ないと、逆に不安になってしまうのではないでしょうか。
しかし判断基準は少なければ少ないほうがよいです。
理想は1つだけです。
なぜ判断基準は1つだけがよいのか。
まず、判断が瞬時にできるからです。
時間をかけないで判断できるということには、「時間の節約」以上の意味があります。
時間をかけない判断は、
「論理的」「直感的」という相反するように思える2つの要素を両立させるからです。
時間をかけるのは文学的です。
時間をかけて、じっくり味わい、ゆっくり思考し、感じ、決めてゆくプロセスが文学です。
それに対して、瞬時に答えが出るのは、数学的、つまり論理的です。
直感的と論理的は矛盾するようにみえるかもしれませんが、実は「時間をかけない」という一点で共通しています。
いろいろ考えるより、直感で決めるほうがうまくいった、そんな経験をしたことはありませんか。
直感は、いわゆる「勘」「ヤマ勘」ではありません。
直感とは、あらゆる経験や知識や知恵が、自分の意志とは無関係に、瞬時に総動員され、
本来のプロセスだと数時間、数日、数年かかって得られる答えが、
瞬時的に突然与えられる…そんな感覚です。
時間をかけないで判断できるということは、論理的・直感的という2つの要素が両立した状態なのです。
判断基準が複数、または多数あると、判断に時間がかかります。
判断基準が多いと、論理的に破たんします。
たとえばですが、
①ファンダメンタルズ分析、②3本の移動平均線、③フィボナッチ、
④タイムサイクル分析、⑤一目均衡表、⑥MACDという6つの「武器」を使って
エントリー判断をする手法があったとしましょう。
とても高度で隙がないようにみえます。
しかし、これは、論理的に破たんしています。
6種類のまったく効能の異なる薬を一緒に飲むことを続けたとしたら、病気が治っても、どの薬が効いたかわかりません。
お医者さんに6種類の薬を渡されて、いつどの薬とどの薬を組み合わせて飲み、
どんな時に、別の薬とまた別の薬を組み合わせて飲むかを自分で判断しなさいと言われては困ります。
それがまさに、判断基準が多数あるテクニカルの使い方、或いは手法です。
移動平均線は買いを示し、一目均衡表では反落の可能性を示している場合を考えましょう。
結果的に上昇すれば「移動平均線が効いた」ということになり、
結果的に下落すれば「下落要因は一目均衡表の雲だった」という説明ができます。
上昇しても、下落しても、なんとでも解釈ができ、
「今回はこの薬が効いた」
「いや、あの薬を飲めばよかった」
「この薬を一緒に飲んだから悪かった」
という説明がいくらでもできてしまうのです。
となると最初から、
「今回の相場はボリンジャーバンドだけで判断しなさい」
「今回は他は無視してフィボナッチだけで」
「今日は一目とMACDと移動平均線を使えば利益になる相場」
と教えてもらえればよいのですが、そんなことは誰にもわかりません。
結果が出て初めて、
今日はこれが原因で動いた、今日はこのテクニカルが効いて上昇、
今日はやはりファンダメンタルズがこうだから下落した、
上昇材料が多かったものの時間的に反落のタイミングだから反落した・・・・・
などと説明ができるのですね。
これが、論理的に破たんしているということの意味です。
時間をかけてゆっくり相場材料とテクニカルを分析し、どの基準で考えるかをじっくり検討する。
これは、上級者のトレードのようでいて、実は負ける人の典型的な考え方にほかなりません。
時間をかけず、瞬時に判断することは、悪いことではありません。
むしろ勝つために必要なことです。
瞬時に判断するということは、見切り発車ではありません。
わからないものは「判断できない」と見送りに分類すればよいからです。
瞬時に判断できるという事実に、論理と直感が集約されています。
1つだけの判断基準が理想です。
そんなシンプルなエントリー判断(つまりテクニカル)が再現性と普遍性をもたらしてくれます。
鹿子木健の相場学より
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